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映画「アルキメデスの大戦」は文系脳でも楽しめる良作だった!※ネタバレあり

映画

※この記事は映画「アルキメデスの大戦」のネタバレを含みますのでご注意ください

地味に面白そうだなぁ…と思っていた映画「アルキメデスの大戦」を観てきました。
地味だけどめちゃくちゃ面白かったし、静かな戦いに胸が熱くなる良作でした。

今夏の映画で1番好きになれるのでは…?と思うほど私は気に入ったので、しっかりと感想を書きたいと思います。
1番心を動かされた部分に触れようとするとどうしてもネタバレは避けられないので、重大なネタバレを含みます。ご注意ください!

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原作未読でも歴史に詳しくなくても数学が苦手でも問題なく楽しめる!

「アルキメデスの大戦」の原作は、三田紀房氏が描いている同タイトルの漫画です。

私は原作は未読でしたが置いてけぼり感は全くなく、最初から最後まで十分に楽しめました。

そして、私は数学がとてつもなく苦手であり、歴史に関しても平安時代と戦国時代あたりにしか興味がありません。
そんな状態でも全く問題なく楽しめたので、数学や歴史が苦手な人にもオススメできます。

菅田将暉さん演じる主人公・櫂が初めて登場したときの印象は、正直なところ「うっわ…嫌な奴」という感じでした。

自分よりも年上であり海軍の重役である山本に対してのふてぶてしい態度は、いくら櫂が軍人ではないとはいえ如何なものかと思いました。

しかし、話が進んでいくと、櫂は奇人変人であり堅物でもありますが、とてつもなく真面目でひたむきな青年であることが分かってきます。
自分に与えられた任務、そして割り出さねばならない数字に対しての熱意と誠実さは凄まじいものです。

上官である山本からの指示により、不本意ながら櫂に付き従っていた田中も、いつしか櫂に敬意を抱き心酔するようになっていきます。

巻尺で地道に長門の計測をしている櫂に対し、自身の歩幅で計測して手助けする、という田中のツンデレ具合がすごく微笑ましかったです^^

田中の心が動くのと一緒に、観客の櫂への意識も変化していけるような、そういった話の流れが上手いなぁと感じました。
プライドが高くて高慢な坊ちゃんかと思いきや、目的のためならば潔く頭を下げることも厭わない櫂が奔走する姿に、いつしか胸を打たれていました。

巨大戦艦・大和への新しい解釈がとても深い

さて、今作で主人公の櫂が挑んでいるのは、「平山造船中将が算出した予算の不正を暴き、巨大戦艦・大和の製造計画を阻止する」という山本から依頼された任務です。

しかし、歴史に詳しくない人でも大和の名は聞いたことがあるように、巨大戦艦・大和は実際に作られています。
そして、この映画「アルキメデスの大戦」の冒頭でも大和は登場し、史実通りに撃沈することになり、多数の若い兵士の命が散っていった様子が残酷に描かれているのです。

つまり、冒頭で既に勝敗の行方は分かっているようなものなんですね。
「アルキメデスの大戦」はフィクション作品ですが、史実通りに大和は作られているという事実が最初から描き出されているわけです。

でも、だからこそこの作品の面白さ、そしてメッセージ性は増しています。

チート級の知能を持った櫂は、いろいろと不利な状況ながらも懸命に大和の正しい予算を算出しようとしていきます。
熱い志と正義を胸に秘めたヒーローがここまで敵を追い詰めようとしているのに、最後に一体何が起こって大和は作られてしまうんだ?と観客はワクワクしながら観ることが出来るのです。

「大和は実際に完成している」という結末を知っているからこそ、終盤の展開が気になって仕方がないんです。
これは非常に上手い構成だなぁと感じました。

最終的に最強の関数を生み出した櫂は大和の正しい予算を算出できました。
しかし、「それがどうした?」と平山が静かに反撃を始め、偽りの予算を出したのは敵国の目を欺くためであると発言。
結局は、新型戦艦建造計画では平山案が採決されます。

あー、そういうオチだったのか…と思いきや、ここで終わりではありませんでした。

櫂は平山が作成した大和設計図を見て、重大な欠陥があると指摘します。
平山もその指摘を厳粛に受け止め、自身の案を撤回させてほしいと進言するのです。

……あれ?これでは大和は作られないで終わるのでは??
そう思っていたところに、最後のどんでん返しがやって来ます。

新型戦艦建造計画会議から1ヶ月後、平山は櫂に精神的な揺さぶりをかけ、櫂が指摘した大和の欠陥を補う計算式を聞き出そうとします。
櫂は動揺しながらも、大和を完成させてはいけない・戦争を起こしてはいけないと懸命に言い募ります。

そんな櫂に、平山は「大和を作ろうと作るまいと戦争は起きる」「戦争が起きれば日本は負ける」と語るのです。

このシーンの平山の言葉で、とても印象的なものがあります。
「日本は負け方を知らない」というものです。

日本は負け方を知らないから、最後の1人まで戦おうとするだろう。
しかし、巨大戦艦という日本の象徴のようなものがあればどうだろうか?
──平山は、そう語ります。

そこで、ああ、なるほど…と唸りました。
平山はとても聡明な人で、日本の行き先を見通していたんですね。
巨大戦艦で戦争に勝つことはできないけれど、その象徴のような巨大戦艦が沈めば、負け方を知らない日本でも敗北を自覚できるかもしれない。

平山は、被害を出さないのは無理だけれど可能な限り抑えるために「日本の象徴」として巨大戦艦を作ろうとしていたんですね。

負け方を知らない日本が負けを認めるために、撃沈する運命を背負った巨大戦艦を作らねばならない、と考えていたわけです。

ここで、冒頭での大和が撃沈してゆくシーンが活きてきます。
航空機からの攻撃に怯えながらも懸命に戦う若い兵士たちが、海上に落ちた敵兵が味方機に回収されているのを茫然と眺めている、印象的なあの場面。

あの戦艦・大和に乗り込んでいた兵士たちは、平山の思想に則れば「生贄」に近い存在です。
彼らの尊い命を思うと、なんとも胸が痛みました。

誰が悪で誰が正義なのか、それは誰にも決められない。

ラストシーンで、櫂は海上の大和を眺めながら涙を流します。
あれはまるで日本の象徴のようだ、と泣く彼の胸の内には、様々な思いが渦巻いていたのでしょう。

大和を完成させてしまった後悔、これから散ってゆく命の儚さ、沈みゆく運命の日本、そういったものに思いを馳せながら、大和の堂々たる美しさに感じ入るものもあったのではないかと思います。

3000人もの命を犠牲にすることになる巨大戦艦が完成する手助けをしてしまった、という自責の念は確実にあったはずです。
しかし、櫂には彼なりの正義があり、彼や平山を責めることなど誰にもできないでしょう。

そして、戦争を避けられるなら避けたいと言いつつも真珠湾攻撃に思いを馳せる山本もまた、一概に悪人とも言い難い。

序盤では、平山側が悪に見えていたけれど、最後には誰が悪で誰が正義なのかが分からなくなっていました。

ただ、ひとつ。
戦争とは本当に残酷なもので、決して繰り返してはならないのだと、それだけは確かだと改めて感じました。

戦闘描写は冒頭の数分間だけだったけれど、それでも戦争の残酷さや虚しさを強く訴えてくる作品だったと思います。

数学が絡む複雑な内容かと身構えていましたが、そう難しい内容ではありません。
老若男女を問わず、とりあえず1度観てほしい!と万人にオススメできるおはなしでした。

全体的に静かで地味な作品ですが、観終えた後の余韻は素晴らしいです。
観ようかどうか迷っている人は、ぜひとも観てみてください!